QRコードというとWebページのURLを読み取るイメージが強いですが、実際にはURL以外のさまざまなデータをQRコードにできます。テキスト・連絡先・Wi-Fiの接続情報・メールの下書きなど、一度知っておくと日常のさまざまな場面で役立ちます。
仕組みとしては単純で、QRコードは「決められた書式の文字列」を画像にしただけのものです。読み取る側のアプリが書式を認識して、Wi-Fi接続や連絡先登録といった動作に振り分けています。つまり書式さえ分かれば、どんなQRコードでも自分で作れます。
URLのQR化 — 基本にして最強の使い方
プレゼンのスライドやチラシ、名刺にQRコードを入れることで、URLを読み上げたり手入力させたりする必要がなくなります。
長いURLはコードのパターンが密になるため、短くするほど読み取りやすくなります。トラッキング用のパラメータ(?utm_source=... など)が付いていると、それだけでURLが倍近い長さになることもあります。QRコードにする前に、不要なパラメータを落とせないか確認すると、コードが目に見えてシンプルになります。
なお、印刷後にリンク先を変える可能性がある場合は、自分が管理するURLを埋め込んでおくのが安全です。QRコード自体はURLをそのまま画像にしたものなので、あとから中身を変えることはできません。自社ドメインの転送用URLを挟んでおけば、印刷物を刷り直さずに転送先を変更できます。
主なデータ形式の書き方
QRコードにできる代表的な形式です。いずれも、この文字列をそのままQRコード化するだけで動作します。
| 用途 | 書式 |
|---|---|
| Wi-Fi接続 | WIFI:T:WPA;S:SSID;P:パスワード;; |
| メール作成 | mailto:info@example.com?subject=件名&body=本文 |
| 電話発信 | tel:0312345678 |
| SMS送信 | smsto:09012345678:本文 |
| 位置情報 | geo:35.681236,139.767125 |
| 連絡先 | vCard形式(後述) |
Wi-Fiパスワードの共有
来客や勉強会の参加者にWi-Fiのパスワードを伝えるとき、口頭で言ったり紙に書いたりするのは手間がかかります。接続情報をQRコードにすれば、スキャンするだけで接続できます。
WIFI:T:WPA;S:ネットワーク名;P:パスワード;;
T が暗号化方式、S がSSID(ネットワーク名)、P がパスワードです。iOSとAndroidの標準カメラで読み取ると、接続の確認が表示されます。
いくつか注意点があります。
- 暗号化なしのネットワークでは
T:nopassとし、Pは空にします - SSIDやパスワードに
;:,\が含まれる場合は、直前に\を付けてエスケープします - SSIDを隠している(ステルス)場合は、末尾に
H:true;を追加します
そして最も大事な点として、このQRコードはパスワードそのものを平文で含んでいます。読み取れば誰でもパスワードを取り出せるため、掲示する場所には注意が必要です。来客用のネットワークを分けておくと安心です。
名刺・チラシへの活用
名刺にQRコードを入れるときは、連絡先情報(vCard形式)やWebサイトのURL、SNSプロフィールを使うケースが多いです。vCardは次のような書式です。
BEGIN:VCARD
VERSION:3.0
N:山田;太郎
FN:山田 太郎
ORG:株式会社サンプル
TEL:03-1234-5678
EMAIL:taro@example.com
URL:https://example.com
END:VCARD
受け取った相手はスキャンするだけで連絡先を登録できます。ただしvCardは情報量が多く、コードがかなり密になります。項目を詰め込むほど読み取りにくくなるため、名刺のような小さな印刷面では、プロフィールページのURLを1本入れるほうが確実なことも多いです。
チラシやポスターでは、イベントページ・申込フォーム・地図をQRコードにしてアクセスを促せます。
テキストを素早く別のデバイスに渡す
パソコンで表示しているテキスト(住所・長い型番・設定値など)をスマートフォンに移したいとき、QRコードを経由するのが意外と手軽です。メールを送ったり、チャットに貼ったりする必要がありません。
特に手入力すると打ち間違えやすい文字列——英数字の混じったシリアル番号や、記号を含むIDなど——を正確に渡したい場面で効果的です。読み取ったあとはコピーできるので、転記ミスがなくなります。
印刷するときの注意
QRコードを印刷物に載せる場合、読み取れるかどうかは1マスの物理的な大きさで決まります。
- 2cm角以上を目安にする(名刺・チラシの場合)
- コードの周囲に余白(クワイエットゾーン)を確保する。文字や罫線を近づけすぎない
- 白黒の明暗差を十分に取る。薄い色同士の配色は読み取れない
- 背景に写真や模様を敷かない
- 明暗を反転させない(背景を暗く、コードを明るくすると読めない機種がある)
読み取り距離の目安は「コードの一辺の10倍程度まで」です。離れた位置から読ませるポスターでは、そのぶん大きく印刷する必要があります。
読み取る側のセキュリティ
便利な反面、QRコードは中身を目で確認できません。URLを見てから開くという判断ができないため、次の点に注意が必要です。
- 屋外に貼られたQRコードは、上からシールを貼って差し替えられることがあります。ポスターの一部だけシールが浮いている、といった不自然さがないか確認します
- 読み取ったあと、遷移前にURLを確認します。多くのスマートフォンでは、開く前にURLが表示されます
- 決済や個人情報の入力を求められた場合は、ドメイン名を必ず確認します
作る側としては、転送を何段も挟まない(最終的なドメインが分かりやすい状態にする)ことが、読み手の安心につながります。
よくある質問
Q. QRコードに入れられる文字数の上限は
A. 最大の型番(バージョン40)で、英数字なら4,296文字、日本語なら1,817文字です。ただし上限に近づくほどコードは細かくなり、実用的には読み取れません。URLなら100文字以内に収まると扱いやすくなります。
Q. 作ったQRコードに利用料や権利の制限はありますか
A. QRコードの規格自体は特許が開放されており、規格に沿って作る限り自由に利用できます。「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標ですが、コードの利用自体は制限されていません。
Q. Wi-FiのQRコードが読み取れても接続できません
A. 暗号化方式の指定(T:WPA / T:WEP / T:nopass)が実際の設定と合っているか、パスワードに含まれる記号のエスケープが漏れていないかを確認します。SSIDに全角文字が含まれている場合も接続できないことがあります。
Q. 印刷したQRコードが読めません
A. まず1マスの大きさ(0.4mm以上あるか)と周囲の余白を確認します。読み取れない原因の多くは、データの内容ではなく印刷条件のほうにあります。
まとめ
QRコードは「決められた書式の文字列を画像にしたもの」なので、書式さえ分かれば用途は大きく広がります。
- Wi-Fi・メール・電話・地図・連絡先など、URL以外の形式が使える
- Wi-FiのQRはパスワードを平文で含む。掲示場所に注意する
- 名刺のvCardは情報を詰め込むほど密になる。URL1本のほうが確実なことも
- 印刷は2cm角以上・余白あり・明暗差ありが基本
- 読み取る側は遷移前にURLを確認する
以下のQRコード作成ツールでは、URLはもちろん、この記事で紹介した書式のテキストをそのまま貼り付けてQRコードを作成できます。入力内容はすべてブラウザ内で処理され、外部に送信されることはありません。